銅像・ブロンズ像の製作に関わる職人は多岐に渡ります。受け継がれてきた技は、製品の中に息づき、確かな品質と、高い芸術性をもち、我々の前に姿を現わします。竹中銅器では、他では真似できない技を持った伝統工芸士・職人と共に、高岡銅器の伝統を継承しています。
竹中銅器(以下、竹中)「本日はお忙しい中、ありがとうございます」
銅像・胸像作家(以下、作家)「いえ(笑)。こうした、あらたまったインタビューは、今まであまりないので緊張します(笑)」
竹中「(笑)先生には、当社からこれまでも、それこそ数えきれないくらいの原型制作をお願いしていますが、原型制作で、一番気をつけている点はなんでしょうか」
作家「たとえば、胸像の場合だと肖像写真がありますね。その方がご存命の場合は、できるだけ直接お会いします。亡くなられている方の場合は、ご遺族や依頼された方から、その方の生前のお話を伺います。
それは何のためかというと、写真だけではわからない、その方の持つ雰囲気をイメージするためなんですね。写真にできるだけそっくりにすることは、比較的簡単なんです。そっくりにするなら、3Dコンピュータを使えばいい。だけども、我々の仕事は、その人の持つ雰囲気、風格、威厳、温かさを原型の中に吹き込むことだと思っています。」
竹中「なるほど。最近では3D画像を撮って、あとは機械任せの胸像製作もありますが、人の手から生み出される温かさ、優しさには及ぶべくもないですね。ところで、今まで原型を制作されての失敗談とかありますか?」
作家「失敗談といえるかどうかわかりませんが。ある胸像制作でこんなことがありました。約1か月をかけて、ほぼ原型完成も間近の頃、お客様に来ていただいて検収してもらいますね。
そのとき、お客様から感想をじかに聞きながら、その場で直していくわけですけども、あれもこれもと手を加えていくと、検収する前とガラリと雰囲気が変わってしまった。お客様も、これじゃ全然似ていない、ということで、いったん、別室で休憩していただくことになりました。」
銅像・胸像作家「その間、私は手直ししたところを、検収前の状態に直していたんです。お客様がイメージされて、指示された修正箇所を考えながら。小1時間ほどでしょうか。あらためてお客様にその胸像をごらんいただいて、これなら良い、という承認をいただけることになりました(笑)。
実は、それくらい、人のイメージというのは、変わりやすいものなんですね。影の変化、数ミリで、印象はがらりと変わります。そうした点で、私はなにより、ご依頼主との対話が重要ではないかと思っています。
竹中「多くの原型を手掛けていると、いろんなことがありそうですね。」
銅像・胸像作家「お客様に満足して、納得していただけることが大事。銅像・胸像作家の役割は、その人の姿を形としてどう表現してあげるかにかかっているのではないかと思っています。原型承認の後は、竹中銅器さんにバトンタッチして、鋳造、仕上げ、着色まで、ほぼお任せですね。そこからの工程もご苦労は多いんじゃないですか?」
竹中「はい、それはまた別の機会に(笑)。お話を伺っていると話は尽きないのですが、多くの原型を手掛けられていると、いろんなことがありそうですね。 今日はお忙しい中、ありがとうございました」
銅像・胸像作家「こちらこそ、ありがとうございました。」